2020年9月1日
グローバル原価管理により、 収益の見える化と キャッシュフローの向上を実現するには

グローバル原価管理により、 収益の見える化と キャッシュフローの向上を実現するには

執筆者 EY Japan

複合的サービスを提供するプロフェッショナル・サービス・ファーム

2020年9月1日

企業のグローバル化により製品単位の収益性が不透明になりつつあります。制度会計では把握できない連結管理会計として、グローバル原価管理が必要になります。

グローバル原価管理で生産の効率化を達成するために

販売拠点・生産拠点を海外へ展開した結果、国や地域ごとの縦割りで管理が行われることにより、工場の負荷状況や製品単位の収益性が不透明になってしまうといったケースが多く見られます。そのような状況下で最適地生産を行ったとしても、モニタリングとコントロールが 難しく、効率化および収益確保の効果を正しく評価することができません。
 

グローバル展開企業の製造に関する課題

  • 原価・収益に関する共通言語がない:本社・拠点間の言葉の定義・理解や情報システムが統一性を欠いており、拠点をまたがって情報収集する際に時間と労力がかかる。
  • 情報収集の網羅性・鮮度が低い:情報収集に時間と労力がかかり情報が部分的である。また、リアルタイムではないため、情報鮮度が低い。
  • 工場負荷調整が後追いになる:地域ごとに販社・工場間の生販調整を行っているため、工場の過負荷が予想されても後追い対応となる。
  • 納期調整・負荷調整に追われて結局収益が出ない: 納期調整・負荷調整で忙しい割には、在庫やキャッシュアウトが多く結局収益も出ない。
  • 現地競合企業に中身より価格で負ける:生販調整がうまく行かず損益分岐点売上高が下がらないため、現地の競合他社に製品の中身以前に価格で負ける。

グローバル原価管理の目的と施策

グローバル原価管理の目的は、原価そのものの見える化だけではなく「グループ内の資産を有効活用し、その時点で最も効率のよい生産先を選択できるようにする」ことにあります。

(1)グループ横串の意思決定プロセス ― 業務プロセス例
  • 四半期・月次サイクルで長中期の販売見通しを立て、長中期の生産計画を立案する。
  • 販売/生産計画を受け収益性に基づく最適地生産シナリオを策定し生販合同会議で検討・採択する。
  • 営業部・生産部・調達部・品証部の責任者が参加する本部長会議などでレビュー・意思決定する。
(2)リアルタイム情報システム― 情報システム例

データ収集基盤( DWH)と BIツールを活用することにより、As-IsのERPシステム(基幹システム)は変更せずにグローバル原価管理の仕組みを構築できます。

グローバル経営の最重要課題は「原価情報」

海外事業展開の判断要素は多岐に及ぶため、これらを組み合わせながら販売機会を探る必要があります。また販売機会の実現には、グローバル原価に基づく現実的な裏付けが重要です。

グローバル原価管理のポイント

  • グループ横串の原価把握:個社利益を含めずグループ全体の損益管理に有効な情報の収集と情報の見える化
  • 原価情報の将来の計画への活用:過去の原価実績の把握だけでなく、販売計画・生産計画・生産能力を加味した将来の計画への活用も考える
  • 経営視点のシナリオ策定能力:見える化だけではなく、収益性向上に資するため経営者視点で事前のシナリオ策定できる人材の育成も必要
     

グローバル原価管理の注意点

  • コード整備

    十分な現状調査が必要となります。また、Small Startでトライアル実施が推奨されます。
    • グループ各社のシステムの違いにより、同一の製品でも製品コードが異なる
    • BOMの整備が不十分
    • 国ごとの会計基準の違いにより、同じ製品、部材であっても原価算出方法が異なる
  • ビッグデータ

    大量データを前提としたシステムと技術の活用が必須となります。
    • データ量が膨大でExcelでは取り扱いが難しい
    • データ分析では、集計や細分化が必要となる
    • コードの変換や維持(製品の追加、拠点の統廃合など)が必要
  • データ利用者の理解

    目的と継続性を意識し、課題解決型アプローチでプロジェクトを進めます。
    • 「定義が曖昧な言葉」「数値算出式の複雑さ」「制管一致」「データ収集負荷の偏り」などによって当初の目的から逸脱し、誰も使えない原価管理情報となることがあるので注意が必要

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サマリー

グローバル原価管理の目的は、原価そのものの見える化だけではなく製品別の収益性の把握や、事業計画(予算計画)の着地を見通し、迅速な打ち手を講じる事にあります。

この記事について

執筆者 EY Japan

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