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PERFORMANCE

Purposeと融合した事業計画

Performance Purposeと融合した事業計画
競争力を保つためにビジネスは絶えず変化しています。そこには世界中の消費者ニーズが高度化し、資源不足や規制強化への対応が求められているという背景があります。

著者:
EY ヨーロッパ, 中東, アフリカ, インド(EMEIA)
アドバイザリー-パフォーマンスインプルーブメント Phani Solomou
EY UK
アドバイザリー-パフォーマンスインプルーブメント Rehana Ali
和訳監修:
EYアドバイザリー株式会社
シニアマネージャー 三浦 貴史

「purpose」と融合した事業計画策定を取り入れることは、ビジネス変革の重要な要素となります。

※Purpose: 本稿では、単なる「目的」ではなく、企業・組織が  存続する社会的目的、存在意義という意。企業の本質的大義。


変化を舵取りする力が必要とされる中、イノベーションと成長の原動力として、あらためてpurposeが重視されるようになってきています。適切に定義された(額縁に飾られるだけの社是等ではない)purposeによって、顧客や従業員、その他利害関係者に対する価値提供をビジネス戦略の中心に据えることができるようになります。そして、最終的にはこれが全ての利害関係者に対して価値を提供することに繋がります。しかし、企業の事業計画の進め方が変化のスピードに追い付いていません。継続的にリソースを再編成し、計画・予算・業績見通しを迅速に調整していくことができなければ、企業変革によって得られる機会を活かすことはできないでしょう。

端的にいうと、企業のpurposeを具現化するためには、事業計画プロセスを再検討する必要があります。前向きな変化を生み出すための仕掛けとしてPurposeを活用していくことが求められているのです。

誤った方向に進んでしまうのはなぜか?


仮に財務予測や計画が信頼に足るものでなければ、それがビジネスにもたらす結果は深刻で、経営者による誤った意思決定を招き、投資家からの信頼を損なうことになります。実は、世界中で業績予想の修正が増加しています。2014年にはFTSE100の企業から38の業績予想修正が出され、これはEYが1999年からデータを取り始めて以来、過去最多となっています。例えば、アメリカのある大手自動車製造会社は、ヨーロッパで業績下方修正を発表した後、株価を5%以上も落としました。この傾向は今後も続く模様です。

1. なぜ今の事業計画の方法では失敗するのか?

- 多くの企業は事業計画を、"意思決定に不可欠な要素"で"リソース配分をダイナミックに調整する元になるもの"とは考えず、毎年繰り返される単調作業として取り組んでいる

そのような企業では、事業計画プロセスは、ビジネス戦略や継続的な業績向上に力点を置くよりも、長々とした年間目標設定の交渉に終始します。(その年の後半まで決定せず、同じプロセスを数か月後にまた始める、といったことが行われています。)

このアプローチではマーケットのスピードに追い付くことはできず、何も生み出せません。例えば、ある大手石油・ガス会社の事業計画は、年間プラニングと目標設定に9ヵ月以上を要していました。しかし、石油価格の大幅な下落によって、緊急に大規模な修正をせざるを得なくなり(ファイナンスチームとビジネスチームはそのため非常に多くの時間を費やしました)、合意に9ヵ月以上を要した元々の事業計画と予想は破棄され、再検討されることはありませんでした。

コスト管理:一文惜しみの百失い

多くの財務部門は、コストコントロールのために各コストセンターに対して、十把一絡げに、全活動の予算を子細に立てるよう要求します。このアプローチは、実行局面で費用支出の権利の意味を持つことになる「ウィッシュリスト」(欲しいもの一覧)の作成に繋がります。結果として、各種の支出がpurposeや組織の利益にどう関連しているのかがはっきりしないままになってしまいます。これは、コスト予算を合意する過程において、ビジネスサイドとの軋轢や交渉を生みだすことに繋がります。現業部門はより柔軟な対応が求められる為、品質や戦略の面で、購買部門が担当する調達戦略からかけ離れていることがあるからです。

あるグローバル消費財メーカーの役員は、自社のリーン生産方式のオペレーションプラグラムの有効性を誇らしげに語っていました。しかし後になってから、その企業ではマーケティングと販促という最大のコスト要素が手を付けられないまま残っていることを認めざるを得なくなりました。結局のところ、コスト管理は、財務部門、購買部門、事業部門のサイロ(たこつぼ)化が障害になっているのです。

間違った仮説からのスタート

ビジネス環境の変化が速まるにつれ、事業計画の前提条件が崩れるスピードも加速しています。これには多くの企業が不意打ちを喰らってきました。例えば、最大手消費財メーカーは当初、より詳細な予測を頻繁に立てることでこの問題へ対応しようとしました。言うまでもなく、より深いトレンドの把握ができるどころか、逆に事態の悪化に繋がり、当該企業は無関係なデータの波にのまれることとなりました。

テクノロジーだけでは解決策にはならない

多くの企業がテクノロジーの選択肢の多さに圧倒されます。適切なツール選びに苦労し、結果として導入に失敗します。ほとんどの場合、新ツールを活用して本質的な事業計画プロセスそのものを変革することなく、新ツールを単に追加するのみにとどまっています。テクノロジー以外何も変化しないということです。

ある企業の間接部門は、新しいプラニングシステムを購入しましたが、スプレッドシートベースの既存のプロセスを載せ替えるだけに終わりました。その為、ビジネスのスピードに合わせてプラニングプロセスを変化させる必要があるという重要事項は見落とされ、意思決定についての説明責任を明確にするという目標も達成できませんでした。

現在進行中のデジタル革命によってもたらされた豊富なデータ活用の失敗

デジタル革命によりデータ爆発が生じましたが、企業の多くはこれが計画と予測の改善に活かせるということを認識していません。ビジネスモデルへのデジタルの影響を最初に認知したセクターの一つはライフサイエンス市場です。今日のヘルスケアエコシステムにおいてデータは新しい通貨となっていますが、ライフサイエンス会社の多くはこの導入に手間取っているようです。

図. 業績管理における主要ファクター

(下の図をクリックすると拡大します)

デジタル革命によりデータ爆発が生じましたが、企業の多くはこれが計画と予測の改善に活かせるということを認識していません。

2. 組織と融合した効果的な事業計画策定とそれによって得られる効果はどのようなものか?

― 企業は、自社の事業計画策定プロセスを、マーケット変化に対するビジネスの対応のあり方に絶えず合わせていく必要がある

これは単なる計画や予測にとどまらず、ビジネス運営のあり方、業績を上げるような意思決定のあり方といった中核的な問題に関わってくることを意味します。

事業計画に企業の「purpose」との一貫性を持たせる

好業績を達成するために、多くの企業がpurposeを戦略の中核に据えています。ある研究によると、purposeを企業活動の仕組みとして用いることで、プレミアムブランドの構築、顧客のロイヤルティや支持の獲得、株式価値の上昇、トップクラスの人材の獲得、従業員のモチベーションの維持につながるということが明らかになっています。1

企業内にpurposeの共通理解をもたらすことは不可欠です。なお、これは経営層の手によって行わなければなりません。企業のpurposeと融合した事業計画策定を取り入れることは、ビジネス変革の重要な要素となります。効果的な事業計画策定プロセスにより、そのpurposeの目指すものに到達するための業績改善とリスク管理に注力することができるのです。

事業計画策定プロセスを費用支出の権利として利用するのをやめる
- Purposeにともなう予算執行 -

全領域とカテゴリーにわたって、支出額に批判的な目を持って、俯瞰的にコストと収益を見なければなりません。単に額が大きいものだけを吟味したり、過去の支出額と比較するだけであったり、リストラによってコスト削減を実現するというだけのものであってはなりません。

そのためには、ゼロベースで予算編成に取り組むべきです。これは、すべての将来活動に対して一から予算を組むという意味ではありません。そのような頭の痛くなるようなやり方では、得られる利益よりも労力を費やす、管理上複雑なプロセスとなってしまいます。実務的に持続可能なコスト低減をするために、企業の将来活動全てについて綿密な予算編成を求める必要はありません。詳細は下記の"コスト削減の5ステップ"をご覧ください。加えて、分析ツールの進歩によって、過去には膨大で不可能と思われていたタスクがシンプルで実行可能な作業となり、企業のコストへの深い洞察が得られるようになりました。

併せて、リーダーシップ、説明責任(アカウンタビリティ)、そして文化的な面における変化も不可欠です。ある消費財メーカーの役員は、マインドセットが"予算に上がっているから使う"というものから"予算枠として使えるものであっても、それは必ずしも実際に使用するという意味ではない"というものに変わったことに言及していました。

コスト削減の5ステップ


実は、企業が持続可能なコスト削減を実現するためには、全ての活動に対する詳細な予算編成は必要ありません。これは5つの簡単で繰り返し可能なステップを導入することで達成できます。


1. 支出の把握

企業は各カテゴリ(直接・間接・運営・販売・管理コスト)における構造的な支出額への洞察を得る必要があります。誰が支出し、何のために、どこで、誰と、いくら、どのくらいの頻度でといった情報は把握するべきことです。詳細分析ではビジネス単位・部門・地域・製品・ブランド・顧客間に何らかの矛盾が存在しないかなどを分析します。


2. 支出ポリシーと調達戦略の導入

1.のステップで把握した支出のトレンドとパターンを用いて、調達戦略の策定と、組織のPurposeに沿って支出を促すようにポリシーの策定を行います。


3. 目標設定

主要業績指標について、高い目標を設定します。多くの企業では、目標設定と詳細な活動予算編成を混同する傾向にあります。適切な行動を動機付けするために、消費を減らし、イノベーションと継続的な業績改善のマインドセットを構築します。高い目標は予算編成とは別にして設定することが可能です。


4. 責任の明確化

コスト管理を強化するため、コストをチェックする責任者・部署を明確化します。


5. 継続的なレビューとモニタリング

目標に対する業績を継続的にモニター、レビュー、詳細確認するように、必要に応じてポリシーの改善を行います。多くの企業は積極的なコスト削減は、売上、ブランドそして将来の成功に影響を与えかねないと不安を抱いていますが、継続的なモニタリングとレビューでこれらの懸念は解消されます。

意思決定をするためにデータとテクノロジーを駆使する

低コストで一般化した分析テクノロジーは事業計画策定プロセスを改革する力を持っています。事業計画策定プロセスを自動化し、より洗練された予測を立てるのに役立ちます。それを活用して、企業が適切なレベルの粒度で、大量のデータ分析を自動化することによって、かつてないほどのスピードと正確さをもって、よりフレキシブルな事業計画策定ができるようになります。予測データを得るための統計的アプローチ(トレンドとパターンの把握)を活用することで、正確性が高まり、より効率的に、素早くリソースの再配分を行うことができるようになるのです。

同様に、低コストのコラボレーションツール(スマートフォンからタブレットやパソコンまで様々な消費者向けデバイス向けにデザインされたツール)はチーム間のコミュニケーションを大きく改善し、意思決定、行動、説明責任をサポートします。

事業計画策定プロセスを変革することは、単に新しいツールを導入するということではありません。それは意思決定におけるアジリティ(迅速性)を高めるために、人とデータから得られる洞察とを一つにする取り組みと言えます。

従来の進め方を捨て去り、マインドセットの変化をもたらす

行動レベルでの変化を成し遂げるために必要な努力を軽視することはできません。これは説明責任、目標とインセンティブの設定方法、究極的には結果管理に影響を与えます。適切な行動を認知してそれに報酬を与えるというゲームに似ています。変化と、それが従業員にもたらす混乱をしっかりと認識しておくことは、彼らの協力とコミットメントを得るために不可欠です。

Purpose-ledプラニングにより得られるもの

多くの企業が過去最高の業績を達成する為のエンジンとしてpurposeを利用しています。分析とコラボレーションテクノロジーを使い、事業計画策定及び予測プロセスの目的を再定義することによって、企業はリソース配置を最適化し業績向上を追求するための適切な事業計画を継続的に運用できるようになるでしょう。結果として、成長とイノベーションに向けた企業のpurposeの実現を促進させるのです。

【脚注】

  • 1 Purpose-Led Transformation: ignite long-lasting change and fuel growth and innovation, www.ey.com/plt, accessed May 2015.