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SAP S/4HANA Financeで構築する次世代経理・財務管理

Performance SAP S/4HANA Financeで構築する次世代経理・財務管理
企業の最高財務責任者(CFO)は、かつてないほど多くの課題への対処を求められるようになりました。直面する多くの課題に対処しつつ、不安定さを増す将来に備えるためには、最先端のテクノロジーを最大限に活用しなければなりません。そのためには最新のツールを採用するだけでなく、発想そのものを転換する必要があります。

著者:

Ernst & Young LLP, US, アドバイザリー サービス
EY グローバル パフォーマンス インプルーブメント ファイナンスリーダー Tony Klimas

Ernst & Young LLP, US, アドバイザリー サービス
EY グローバル SAP Go to Market リーダー Tim Fuller

Ernst & Young LLP, US, アドバイザリー サービス
EY アメリカ SAP リーダー Michael J. Yadgar

Ernst & Young LLP, US, アドバイザリー サービス ― パフォーマンスインプルーブメント
プリンシパル Samir Jaipati

Ernst & Young LLP, UK
ジャーナリスト Luke von Kotze

和訳監修:

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
パートナー 梶浦 英亮

EYアドバイザリー・アンド・コンサルティング株式会社
エグゼクティブディレクター 山本 幸星

最先端のテクノロジーの活用は、企業の経理・財務管理部門が、これまで以上の深度と迅速さで経理・財務リスクの把握をすることができ、企業のリスク対策がより高度化することを可能にします。

ビジネス環境が不安定さを増すなか、CFOに対する期待はかつてないほど高まっています。CFOは、コスト削減や事業の品質保持に努める傍ら、データから洞察を導き出す参謀として、また外部のステークホルダーに対応するスポークスマンとしての責任も果たさなければなりません。

こうした難題に対処するためには、最先端のテクノロジーを最大限に活用する必要があります。これは業務プロセスやテクノロジーの変更にとどまらず、経理・財務管理業務そのものを抜本的に変革することを意味します。業務構造、業務プロセス、人員構成といった経理・財務管理の運用モデルを変革することが重要です。

経理・財務管理の多角的な変革に取り組むCFOをサポートするために、EYは様々な専門性を持つプロフェッショナルを世界中から動員し、新たなサービスパッケージ"EY Agile Business Finance"の提供を開始しました。

最先端のテクノロジー出現がもたらす新たな課題

クラウド、ブロックチェーン、インメモリーコンピューティング、ロボティクス、人工知能(AI)――これらエンタープライズアプリケーションの領域に出現した最先端のテクノロジーが、企業のビジネスを変えようとしています。こうした変化に伴って、CFOにかかる圧力も強まっています。

  • 最先端のテクノロジーが経理・財務管理業務に与える影響に対処することは、CFOにとって重要な課題です。CFOには、組織が適切な投資を行い、新しいテクノロジーを最大限に活用できるようする責任があります。EYアメリカのSAPリーダーを務めるMichael Yadgar は、「テクノロジーに精通していなければ、現代のCFOは務まりません。もはやIT 部門のみに頼ってはいられないのです」と述べています。
  • テクノロジーの発展は、人材やスキルに関する課題も生み出しています。多くの企業が経理・財務業務の一部を海外にアウトソースしたり、自動化したりしているため、IT 部門に若年層から中堅の人材が十分に確保されていません。CFOはキャリアパスや後継者育成プランを刷新し、経理・財務管理が重要なスキルを確保できるようにしなければなりません。

新しいテクノロジーや社会全体のトレンドも、CFOに根本的な問いを突き付けています。
EYアメリカのSamir Jaipatiは、この問題を次のように説明しています。「新しいテクノロジーとグローバリゼーションの影響は、企業のビジネスモデルに様々な変化をもたらしています。CFOは、新しいビジネスモデルや収益構造を理解し、組織を成功に導くためにはどうすればいいのかを自問しなければなりません」


「CFOは、新しいビジネスモデルや収益構造を理解し、組織を成功に導くためにはどうすればいいのかを自問しなければなりません」

EYアメリカ アドバイザリー サービス
アジャイルファイナンス リーダー, プリンシパル Samir Jaipati


変革に直面するCFO

世界全体が、社会、政治、経済面での不安定さをますます増しています。新たな規制や制約が次々現れ、長らく財務上の慣習と見なされていた手続きも変わり、企業に対する監視が強化されるようになっています。

こうした不安定さや不確実性を前に、企業やステークホルダーはCFOに対し、的確な洞察をより頻繁に提供することを求めるようになりました。

複雑性の高まりは、CFOの周囲でもすでに日常となっています。
EYグローバルのTony Klimasによると、「今日のCFOはテクノロジーの課題だけでなく、外部の戦略要因と内部のオペレーション要因にも同時に取り組まなければなりません。これは一人の人間が担う役割としてはあまりにも複雑だと言えるでしょう」Tonyはまた、「CFOには優秀な部下が必要です。多様なスキルを持つ人材で周囲を固める必要があるのです」と言っています。
今日のCFOは、投資家や規制当局といったお馴染みの顔ぶれに加えて、アクティビスト投資家やコミュニティのステークホルダーといった幅広いステークホルダーとも交流しなければなりません。
その結果、CFOはこれまでよりも"外交的な"役割を担うようになっています。「多くのCFOが、自分は組織の"外務大臣"の役割を果たすようになっていると感じています」とTony Klimasは言います。「財務上の数字や業績の心配をしたり、金融市場から資金を調達したりするだけでなく、CFOはメディアや政治家、外部のステークホルダーへの対応に時間を割くようになっているのです」


「多くのCFOが、自分は組織の"外務大臣"の役割を果たすようになっていると感じています。つまり、CFOはメディアや政治家、外部のステークホルダーへの対応に時間を割くようになっているのです」

EY グローバル パフォーマンス インプルーブメント
ファイナンスリーダー Tony Klimas


変化の時代に適した新しいアプローチ

変化のスピードが速まるなか、CFOはますます予測不能となった将来に備えなければなりません。
Samir Jaipatiによれば、それは組織が将来に備え、組織に必要な実力を手に入れることに注力する必要があることを意味します。「クライアント企業に対しては、CFOとは半年間もの間、200メートル走をしているかマラソンをしているかわからないレースに参加させられたアスリートのようなものだと説明しています。どんな困難が降りかかってきても対応できるように、CFOは柔軟でタフで機知に富んだ人物でなくてはなりません」

その一例として、Jaipati はゼロベース予算(過去の実績ではなく、事業活動がもたらす利益をもとに予算を組むこと)、価値ベースの資本配分、そして適切なセグメントでの計画・予測を検討することをCFOに提言しています。

"テクノロジー"の範疇を越えた幅広い変革

CFOが直面している重要な課題の中には、財務やテクノロジーといった特定の領域に留まらず、ビジネス全体に影響を及ぼすものがあります。以下は、その一例です。

  • 自社の業種や組織にマッチした、利用可能な新しいテクノロジーは何か?
  • このテクノロジーがもたらす脅威と機会を組織が理解し評価できるようにするためには、どうすべきか?
  • 最新のテクノロジーを活用して、新しい事業モデルを取り入れるためには、どうすべきか?
  • こうした課題を解決するためには包括的な変革を実行しなければなりません。EYが、グローバル組織ならではのスキルと深い知識を活かして、革新的な大規模サービスパッケージ"EYAgile Business Finance"を開発した理由は、ここにあります。

    EYとSAPの共同プロジェクト

    EYはSAPと緊密に連携しながら、困難な課題に取り組むクライアントのための新しいアプローチを開発しています。エンタープライズソリューションを提供している企業はSAPだけではありませんが、EYのクライアントの大多数はすでにSAPアプリケーションのユーザーであり、SAP S/4HANA Finance の導入はEY Agile Finance Transformationプログラムを実行するための重要な前提となっています。

    EYのTony Klimasによると、SAPの最新アプリケーションは直観的なユーザーインターフェースによってユーザーの操作性を高めています。「今年、SAP本社で開かれたミーティングでは、チームは私たちをPCの前に座らせ、簡単な説明を行いました。それだけですぐにSAPクラウドアナリティクスを使い、本格的なレポーティングを構築することができました」とKlimasは述べています。

    「私は財務畑の人間で、テクノロジーには強くありません。そんな私でも、短時間でデータソースに接続し、必要な情報を簡単に見つけ、すぐに関連性の高い有用なデータを視覚的に表示できました。新しいテクノロジーの宣伝には食傷気味でしたが、これには本当に驚きました」

    EY Agile Business Financeが経理・財務管理にもたらすメリット

    • 業務を自動化・整理することにより、リソース不足を緩和する
    • 目的に対して的確な洞察と分析を提供することにより、収益とマージンを拡大する
    • 高付加価値業務への集中度を高める――データの収集やクリーニングにかける時間が減り、ステークホルダーが求める分析と見解を提供する時間が増える
    • コンプライアンスの維持に必要な機能が提供され、自社要員が運用で実施する作業時間が削減される
    • 業務のリアルタイム性が高まるため、経理・財務管理業務(と会社全体)が新しい課題に迅速かつ効率的に対応できるようになる
    • データの変革

      EY Agile Business Financeは、CFOが業務の複雑化や要求の高まりに対処できるように、データの収集、処理、表示、共有プロセスの合理化・統合を進めます。

      ソースシステムから収集されたデータは、これまではEnterprise Resource Planning(ERP)アプリケーションに送信されていました。ERPは、受け取ったデータをまずはデータウェアハウスに送り、次に計画系アプリケーションに送ります。データは、これらのアプリーションで処理され、ダッシュボード上に表示されます。このプロセスは、会社の成長に伴って複雑化する傾向がありました。関連するシステムが増えることで、データ品質が損なわれることも少なくありませんでした。

      SAP S/4HANA Financeを導入すると、データは、データソース(POS端末等)から直接ERPに送信されるようになります。ERPは明細単位までドリルダウンが可能で、リアルタイムにデータを処理した上で、ダッシュボードや可視化ツールを使って洞察と分析を行い、共有します。SAP S/4HANA Financeレイヤーでは、計画、連結、資金管理、財務報告作成等の財務プロセスの処理も実行されます。

      Tony Klimasは、これがどれほど重要な変化であるかを次のように説明しています。「2006年に、私はある小売企業の大型プロジェクトに参加しました。この会社は、品目と在庫の両方の観点から店舗レベルでの分析を実行したいと考えていました。組織の規模が非常に大きかったので、この要望に応えるためには何百万行ものデータを処理しなければなりません。しかし、それだけのデータを処理することは、当時のテクノロジーでは不可能でした。それが今では、店舗レベルでデータを分析できるだけでなく、そのデータをSAPのFioriインターフェースを通じて、クラウド経由でモバイル機器に送信することも可能です」

      データ処理が容易になったおかげで、CFOの時間を節約できるようになっただけでなく、新たな洞察を生み出すことも可能になりました。その一方で、新たな問題も生じています。例えば、単に可能だからという理由で、経営陣は手元にあるデータをすべて分析しなければならないと思いこむかもしれません。CFOは、特定のビジネス課題の解決に分析の焦点を絞る必要があります。

      リスクマネジメントとコンプライアンスの変革

      新しいテクノロジーは、新たなリスクに関する洞察を経理・財務管理部門が迅速に提供できるようにすることで、企業がリスクに効果的に対処することを可能にします。

      財務リスクの管理は、従来は取引サンプルをチェックするという形で行われていました。しかし、財務リスクのモニタリングは急速に自動化されつつあり、将来的には注文書や請求書のサンプルチェックは不要となるでしょう。システムがすべての書類をチェックできるようになるからです。サンプルに頼らなくても良いということは、リスクマネジメントの質が上がり、工数が短縮され、コンプライアンスにかかる費用が減ることを意味します。

      とはいえ、Michael Yadgar が指摘しているように、データやテクノロジーの活用が進めば進むほど、サイバーリスクのような固有のリスクも生じることになります。また、こうした急速に変化している分野では、コンプライアンスとベストプラクティスの境界線でグレーゾーンが生じることがあります。
      しかし、EYはグローバルな顧客基盤を活かして、組織がベストプラクティスを特定し、実行できるよう支援することができます。「EYは、組織に代わって『境界線』を明確にすることできます」とYadgarは述べています。
      「組織は、それを守ればいいだけです」

      CFOと外部ステークホルダーの関係強化

      経理・財務管理の変革によって、日常業務にかかる時間とリソースが減れば、CFOはより多くの時間と労力を社内外のステークホルダーとの関係作りに費やせるようになります。CFOは、ステークホルダーが求める情報を、より短時間で入手できるようになるでしょう。システムの合理化とプロセスの自動化によって、より質の高い情報を、ほぼリアルタイムで入手することも可能となります。

      ブロックチェーンのような新しいテクノロジーは、経理・財務管理が社内外のデータを開示し、認証し、保護する方法を変革することができます。これにより、外部ステークホルダーと連携する機会が生まれ、投資家、銀行、規制当局、サプライヤー、顧客との関係が改善されます。こうしたテクノロジーは、関係会社間取引の会計処理のようなバックオフィス機能にも適用できます。

      サプライヤー側では、ブロックチェーンによってネットワークの統合が強化され、必要な情報(例えば、請求書、発注書、支払金額に関する情報)に安全にアクセスできるようになります。一方、顧客に対しては、製品に関する情報を一元的に提供し、適時に請求処理を行うことが可能となります。品質管理上の問題もスピーディに改善できるようになり、顧客満足度を短期間で向上させ、こうした業務を担当していた経理・財務管理の負荷を軽減させることができます。

      人材関連の課題の解決

      ロボティクス、AI、自動化ツールといったテクノロジーは、財務人材のキャリアパスを一変させる可能性を秘め、CFOに長期的な人事施策でのテーマを突き付けています。最先端のテクノロジーは、従来のアウトソーシングの在り方も変えようとしています。これまで多くの企業で実施されてきている定型業務のアウトソーシングが有していたコスト面での優位性は、業務の自動化によって失われつつあります。一方、新しいテクノロジーによって、人々は過去に例を見ないほど容易に、かつ円滑に、国境を越えて連携できるようになっています。

      現在進行中のテクノロジー革命は、仕事の形も変えつつあります。つまり、人々は働き方、働く場所、働く人に対する考え方を大きく変えることを求められているのです。CFOは、新しいテクノロジーが生み出す人事関連の課題を無視したまま、新しいテクノロジーの恩恵に浴することはできません。
      このため、EY Agile BusinessFinanceには、CFOがEYピープル・アドバイザリー・サービス・チームのスキルを利用して、現在と未来の人事課題(基本的には財務人材に関する課題)に対処するためのOrganizationalCapability Excellence(OCX)機能が含まれています。

      未来志向の段階的アプローチ

      これらの新機能は、SAPのテクノロジーとEYの知見を余すところなく活用することで実現されるもので、大きな可能性を秘めています。しかし、同じ組織は一つとしてなく、どの組織も独自の課題を抱えています。
      そのため、EY Agile BusinessFinanceはクライアント固有の要求事項に柔軟に対応できるように設計されています。

      EY Agile Business Financeは、テクノロジー基盤に対する企業の投資に対して、効率的に効果を引き出すことに焦点を合わせています。また、大規模・長期のプロジェクトが完了するまで効果を生まない"ビッグバン"的アプローチは採らず、変革の過程で段階的に価値を創出するようになっています。
      EY Agile Business Financeは、きわめて未来志向のアプローチであり、企業がすでに保有しているテクノロジーの価値向上に取り組むと同時に、新しいテクノロジーや将来の難題に備えることができるように設計されています。

      「テクノロジーに精通していなければ、現代のCFOは務まりません。もはやIT部門のみに頼ってはいられないのです」

      EY アメリカ SAP リーダー Michael Yadgar

      記事元(英文):
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