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インドに賭ける: インドが将来のマーケットリーダーと目される理由

Performance インドに賭ける: インドが将来のマーケットリーダーと目される理由
インドの成長見通しは極めて良好であり、総人口の年齢中央値が30歳を大きく下回っていることを考えると、消費者市場も成長が見込まれています。ここに増加する労働人口による低コスト構造という特性を加味すれば、インドの成長見通しはさらに強固なものとなるでしょう。近年の政策変更もインドの発展を後押ししており、インドのハイテク製造業は投資先として大きな魅力を持つようになっています。本稿では、これらの機会を詳細に検討するとともに、ドイツを例にインドの発展が諸外国にもたらす可能性を考察します。

著者:
Head of German Business Center India, EY
 Hermann Mühleck
Senior Manager, Advisory Services - Strategy, EY, Germany
 David Toma
Consultant, Advisory Services, EY, Germany
 Kevin Prinz
Consultant, Advisory Services, EY, Germany
 Alexander Brox
Senior Consultant, Advisory Services, EY, Germany
 Alexandra von Künsberg
和訳監修:
EYアドバイザリー株式会社  シニアパートナー 山内 基弘
EYアドバイザリー株式会社  パートナー ランジャン アミット
EYアドバイザリー株式会社  マネージャー 関口 裕代

教育や能力開発への投資は基本的な施策ですが、国民の力を強化し、幅広くかつ強力な中産階級を活用して持続可能な成長を成し遂げるためには効果的です。

インドは、BRIC諸国(ブラジル、ロシア、インド、中国)の中で最もパフォーマンスの高い投資対象国と考えられています。ドイツの大手ハイテク企業のCEOとCFOは、BRIC諸国のうち、現在投資環境が最も優れているのはインドだと回答しています(図1参照)。これは、EYが国際的なハイテク企業で新興国市場への投資判断を任されている92名の経営幹部を対象に実施した調査、Prospects on Indo-German collaboration in high-tech manufacturing1が明らかにした9つの事実の一つです。
回答者の94%は、インドの成長率は近い将来大きく上昇すると予測しており、51%はインドの外国直接投資(FDI)政策はさらに緩和されると見ています。また、インドはほぼすべての回答者が認めているように有効市場規模が大きいため、投資環境としては非常に優れていると言えるでしょう。ブラジル、ロシア、中国では関税、税金、輸出入などに関する規制が増加し、経済の成長予測が引き下げられていることを考えると、インドの状況は特筆に値します。ブラジルとロシアに関しては、過半数の回答者が成長率はむしろ低下すると予測しているのに対し、インドは回復軌道に乗ると見込まれています。

図1. BRIC諸国 -- 投資環境比較

(下の図をクリックすると拡大します)

インドのハイテク産業の可能性を最大限に生かすためには、先進国やアジアの新興国との連携をさらに促進する必要があります。

インドの優位性:増え続ける労働人口

グローバル経済が多極化する中、将来を見据え適切な判断を下そうとしている企業は新興国に熱い視線を注いでいます。新興国は確かに経済発展の鍵を握っていますが、その一方で先進国がすでに克服した課題も抱えています。

BRIC諸国は、先進国を上回るペースで成長し続けています。中でもインドは過去数十年にわたり、圧倒的な成長力を世界に見せつけてきました。インドの人口動態は他のBRIC諸国より良好であり、2014年の人口は12億4000万人、年齢中央値は27歳となっています。2050年には年齢中央値は37歳、労働人口(15~64歳)は総人口の約68%を占める10億人に達するでしょう。世帯の平均消費も増加し、台頭する中産階級が個人消費と国内需要のけん引役となる見込みです。労働人口の増加と中産階級の拡大は成長の重要な条件です。これに加えて、安定した政権が生まれたことで景気回復の見通しも明るくなりました。

ハイテク分野の可能性

本調査では、ハイテク製品に対する旺盛な消費意欲がインド国内に存在することも明らかになりました。インドは可処分所得の増加が見込まれているだけでなく、先端技術を用いた製品やアプリケーションに対する需要も多く、ハイテク製造業にとって魅力的な環境となっています。インドやアジアのニーズを満たす商品をつくることが、すべての投資家に求められているのです。

本調査では、インドとの関係性が深く、かつ外国企業の投資先として最も有望と思われる13のセクターを選び、評価しました。

  • 電子システム設計・製造(ESDM)
  • フォトニクス
  • IT
  • 自動車
  • 民間航空・空港
  • 交通インフラ
  • 再生可能エネルギー
  • 重工業
  • バイオテクノロジー
  • 製薬
  • 防衛製造
  • 宇宙

セクタープロフィールには、各セクターの現状、成長見通し、セクター固有の動向、および国際企業の専門家がそのセクターをどう捉えているかがまとめられています。セクタープロフィールを読めば、ドイツ企業の一般的な投資判断プロセスをもとに、インド投資を検討する際に注目すべき点をもれなく把握することができるしょう。上記の13セクターのうち、特にドイツ企業との連携が盛んなのは、ESDM、自動車、民間航空・空港、交通インフラ、水、再生可能エネルギー、重工業の7セクターです。

ハイテク製造分野におけるインド・ドイツ連携の展望


本調査は、EYと在ドイツのインド大使館がハイテクセクターでの両国の協力可能性を探るために共同で実施したものです。調査の範囲は、インドの中でも特に発展が見込まれるセクターと、ドイツの民間資金がこれらのセクターに流入することを阻んでいる課題を特定し、適切な政策措置を提案することでした。

本調査は、市場の主要プレーヤーの見解と客観的な経済データを組み合わせることで、インドのハイテク産業を包括的に描き出すことを目指しています。専門家の視点を正しく反映するために、EYはBRIC諸国に進出しているか、近い将来に投資を行うことを検討しているドイツのハイテク製造企業92社のCEOとCFOにインタビューを行いました。

目的は、投資先としてのインドの可能性と魅力、予想される問題や障壁を企業の経営幹部がどう考えているのかを理解することでした。ドイツ国内の主要なステークホルダーにも詳細なインタビューを行いました。具体的には、VDA(ドイツの自動車業界団体)、VDMA(ドイツの技術団体)、ZVEI(ドイツの電気工学・電子工業団体)、ドイツ銀行、KfW銀行グループです。これらのインタビューは、一次データから得られた洞察と市場に関する事実を組み合わせ、インドの状況を正確に理解する助けになりました。その結果、ドイツのFDIにとって最も魅力的なセクターを特定できただけでなく、経済・事業環境全般を改善し、特に将来の二国間FDI活動を支援する方法について、結論を導き出すことができました。

乗り越えるべき課題

もちろん、投資判断に影響を与える課題や、ハイテク製造セクターや投資家グループの事業運営を脅かす可能性のある課題は存在します。インフラの改善、規制関連の手続の簡素化、FDIの自由化、税制の簡素化はその一例です。

しかし、解決に向けた取組みはすでに始まっています。例えば政府主導の大規模な計画が起爆剤となり、インドではインフラの改革とさらなる市場開放が進みつつあります。こうした変化の原動力となっているのが「Make in India」計画です。この計画は、インド政府が以下の目的で実施しているものです。

  • FDIを大幅に自由化する
  • Web技術を導入して行政手続を簡素化し、透明性を向上させる
  • 能力開発施策を実施する(特に加工貿易分野)
  • 公的投資により、インフラ開発やスマートシティ開発等のプロジェクトを促進する
  • 物品・サービス税改革を遂行し、間接税制を合理化する
  • 投資家の知的財産を保護するために、「国家IPR(知的財産権)ミッション」と連携して国際基準を策定する

インドは、投資を歓迎する開かれた国に生まれ変わろうとしています。

この計画は、インドの独立以降、最も大規模な経済改革です。教育や能力開発への投資は基本的な施策ですが、国民の力を強化し、幅広くかつ強力な中産階級を活用して持続可能な成長を成し遂げるためには効果的です。「スマートシティ計画」や持続可能な水・動力スキーム等のインフラ改善は、外国投資を引き付けるだけでなく、適切に実行すれば、インドが持続可能な成長を成し遂げ、何百万人もの新規雇用を生み出す助けとなるでしょう。

株式・債券市場へのアクセスが改善されれば、新事業の資金調達手段も広がります。国際的な輸出管理体制への参加や知的財産権をめぐる新たな戦略は、国際貿易を円滑化し、世界の先端技術をインドに移転するプロセスを加速させるでしょう。本稿やインド・ドイツ連携に関するEYの調査が示しているように、インドのハイテク産業の可能性を最大限に生かすためには、先進国やアジアの新興国との連携をさらに促進する必要があります。事業環境の改善は即座にプラスの影響をもたらし、さらなる投資機会を生み出し、投資家が目の前の課題を乗り越える助けになるでしょう。また、インドと投資家の母国の間で強力な二国間パートナーシップが築かれれば、関連するセクターに波及効果が及び、中長期投資は乗数効果を生み、両国に利益をもたらすでしょう。本調査には、インド投資の課題に対処するための仕組みや手段が詳しく記載されています。

セクタープロフィールと分析:重工業


重工業セクターは、大きく3つのサブセクター(重工業・工作機械、重電機、自動車)に分けることができます。ドイツの対インド輸出の大部分は工学製品と工作機械であることを考えると、このセクターにはインドとドイツの連携機会が豊富にあると言えるでしょう。


主な特徴

  • インドの重工業セクターは、概して3種類の企業で占められています。国営企業(CPSEと呼ばれる政府所有の大企業)、民間企業、そして大規模な外国企業です。
  • インド政府は、外国資本を呼び込むことの重要性に気づき、機械・工作機械のためのFDIを最大100%まで承認したほか、外国投資の重大な阻害要因となっていた関税と規制を削減しました。
  • さらに、工場と機械に10億インドルピー(約17.5億円)超を投資している重工業企業には15%の税額控除が提供されています。

セクターの動向

  • 国内市場が出現し、重工業セクターの成長の大きな源泉となっています。計画されている複数の公共事業は、鉄道・道路建設、発電、配電といった産業に大規模な投資を呼び込むことになるでしょう。
  • 建設や自動車産業への民間投資は、重工業に対する需要を拡大します。
  • 電力需要が増加し、発電や変電・配電双方のキャパシティ拡大が求められるようになるにつれて、新たな取組みが始まるでしょう。
  • 技術サービスを外部委託する流れは、2020年までに8800億ユーロ(約113兆円)の市場を生み出す見込みです。移転収入の約25~30%がインド国内に還流すると見られています2

注目すべき理由

  • インドの重工業セクターは着実な成長が見込まれています。2010~14年のCAGRは14%でしたが、2014~20年は17%になる見込みです。
  • ハイテク工学製品は国内生産が追い付いておらず、国内需要の約70%が輸入品でまかなわれています。
  • 消費者市場の拡大は重工業に有利に働きます。運輸・自動車セクター、ESDMおよびエネルギーインフラ(重電機産業)の急速な発展は、このセクターに利益をもたらすでしょう。
  • インド政府はインドのエネルギーインフラに2648億ユーロ(約34兆円)を投資しています。
  • インドには、エントリーレベルからハイエンドまで幅広い人材がそろっていますが、学校教育以外の正規訓練を受けた技能労働者は十分に供給できていません。

インド政府は、外国資本を呼び込むことの重要性に気づき、機械・工作機械のためのFDIを最大100%まで承認したほか、外国投資の重大な阻害要因となっていた関税と規制を削減しました。

図2. セクター分析:重工業

(下の図をクリックすると拡大します)

結論

インドは、投資を歓迎する開かれた国に生まれ変わろうとしています。また、国内で生産される多様なハイテク商品に対するインド人の旺盛な消費意欲は、インド市場に照準を合わせた商品開発を投資家に迫り、インドを取り巻く様々な国に大きな可能性をもたらしています。投資に関する課題はまだ残されていますが、二国間の連携やパートナーシップを通じて克服できるはずです。世界最大の民主主義国家であるインドは、増え続ける労働人口を武器に、強力なサービスセクターを持つ最先端の工業国へと姿を変え、外国投資家や経済・政治上のパートナーに大きく門戸を開こうとしています。

【脚注】

  • 1 The report is available for download at www.de.ey.com/HighTech-India de.cy.comウェブサイトへ.
  • 2 Transfer pricing study: engineering and industrial chains industry, EY, 2014.

EYのレポート"Prospects for Indo German Collaboration in High-Tech Manufacturing"の全文は以下のURLでダウンロードできます。